15MBとデミオ

MAZDA2 15MBとデミオの直接比較というのはいまだかつて類がないだろう。この日暇を持て余していた私は、ひとつデミオのレンタカーを借りてみて、わが幸福号とじっくり比較してやろうと思い立った。実はというと前日に乗ったロードスターがあまりに楽しかったので、買って間がないというのに幸福号から心が離れつつあった。これはいかんということで、幸福号に花を持たせるという意味で、デミオには申し訳ないが切られ役を買ってもらうことになった。

さて、一見したところでは明確な違いはフロント・マスクとリアコンビ・ランプくらいであり、どうせ同じクルマだと暗い気持ちになってしまう。どころか、レンタカーであるはずのデミオにはシャークフィン・アンテナや後席のルーム・ランプといった上級装備までもが完備しており、幸福号はむしろ見劣りする始末だ。


おいおい、デミオよ。切られ役の分際で小癪な真似をやってくれる。私だって、それくらいは百も承知だ。幸福号のよりどころはホイールにあるのだ。MAZDA2史上もっとも軽量な1,030kgを実現しえたのは、ひとえにこのアルミ・ホイールのおかげであって、一本当たり2.5kgほど軽くなっているようだ。これはRAYSホイールでモディル最軽量を実現した、ロードスター990Sの手法と同じである。公式ホームページでも、15MBはロードスターNR-Aと並んで紹介されているくらいだから、やっぱりMAZDAとしても15MBはロードスターと同じく特別な存在なのだろう。


そう、やはり15MBとデミオはそれなりに違うのである。けしてロゴが違うとか、ランプが少し違うとか、その程度のものじゃなくて、そもそもの育ちが違うのである。字は同じ宇品工場でも、15MBはロードスターばりの英才教育が施されているのである。恐れ入ったか、デミオめ。


ところがだ。ハシってみて私の自信は無に帰してしまった。幸福号に対する誇りみたいなものは空の彼方へ飛んでった。なぜなら、デミオの方が好かったからだ。舵を切ったときの、素早い応答性がデミオの方がより良く、幸福号のそれはワンテンポ遅れてくる感じである。ロールの変化量もデミオの方が少ない感じだ。間を置かずに同じコースを辿ったのだから明白である。どうやら15MBまでもがSKYACTIV由来の煮詰まり病に罹患してしまっているらしい。

確かに、乗り心地は15MBが一枚上手であるのだが、ハシリを謳うモディルではあってはならないことである。悲しいかな私はデミオの方に走る歓びを感じてしまった。幸福号に関してはがっかりであった。もう、これ以上の付き合いはお互いつらくなる一方であろう。私は純正至上主義者である。いじられたい幸福号にとっては相応しくない人種なのだ。

其の二
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