マツダ・ロードスター(ND)
ファースト・インプレッションは意外なものだった。盛大にエンストをやらかしてしまったのだ。
幸福号と比較すると、各操作のシッカリ感が桁違い。当然ながらクラッチも重く、ペダルの反力が予想以上で足が抜ける→エンストとあいなったのだ。シフト・フィールもカチッとしていて、重い。我が幸福号とは一線を画する男のマシィーン様にたじろぐ私であった。
たかがロードスターとはいえ、ママさん実用車(幸福号)に飼いならされた身としては、こいつは男男していて敷居が高い。
ま、酷使されるであろうレンタカーだがら、要所要所に手が入っているのかもしれないが、いずれにしても、ロードスターを所詮はマツダ車でしょなどと見くびっていると痛い目に合うということだ。
ものの5分もすれば体が慣れてくる。むしろ、これくらい重い方がスポゥティを実感できて好いだろう。
調子に乗ってアクセルを吹かすと、馴染み深いSKYACTIV-G1.5の調べである。しかも、ロードスターであれば6000rpmからも益々回る。レットゾォーン付近の突き抜けた快音は一聴に値するエンジェル・ヴォイスであり、恍惚の瞬間である。
走り始めて15分。第一次買い替え検討期に突入した。
でもま、市街地をタラタラ流すのならば楽しさは幸福号と同等か、チョイと上くらい。わざわざ300万も出して、しかも納車僅か2か月の幸福号を手放してまで買い替える必要はなかろう、と現実を見てやり過ごしたのだが。
しかしやがて、峠道。恐れていた第二次買い替え検討期が始まる。
「うぉー！チクショー！！」
人目も憚らず(屋根が開いていたので)、私は叫んだ。あまりの楽しさに我慢しきれず、声が出ちゃったのである。
FR＆ライトウエイト＆6MTに、さらにオープンともなると、こいつは人を殺す凶器になる。鬼に金棒とはこのことである。そこにマツダの変態的な調律(失礼！)が加わると、それはもうまさに、斉藤由貴＋チャイナドレス＋ピンヒール程の強烈さとなる。なぜ、すれ違うロードスター乗りはきまってニタニタ薄気味悪いうすら笑いを浮かべているのだろう。いつも疑問だったのだが、ようやくその理由が分かった。
ロードスターで峠を攻めると、今まで味わったことのないような、心と体が幸せで満ち満ちた気分になれるのだ。
いや…、一度ある。しずかちゃん(43歳)との一夜である。
ロードスターとの結びつきは、まさしく男女一体だ。多分マツダはそれが公言しにくいから、「人馬一体」なる言葉を使っているのだ。
これさえあれば、何もいらない。もはやベタ褒め状態だが、そいつが事実だ。
あゝ、買えばよかった。
間違いだらけのマツダ選び、後悔だらけの人生である。＜2022年11月＞